ことの経緯
デザインチームのリーダー・リーダーを兼任していた頃、ロゴのデザインの仕事も多くありました。しかし、チーム内ではロゴデザインに関して経験の浅いメンバーもいたことや、それぞれのアウトプットの仕方も異なっていたため、
ロゴの方向性が大きくズレすぎてしまうという課題がありました。また、メンバーも多く(8名)、製作期間もひとつのロゴに対して2週間程度と短かったため、ロゴの作成プロセスを体系的にする必要がありました。
もちろん多様な表現でロゴを提案することは大事ですが、それは意匠の表現の仕方の多様性であって、意匠を通して伝えたい想いや意味は、ある程度、狙ったポイントでデザインしていく必要があると考えていました。
ロゴの要件となる情報に関してはフレームワーク的に認識合わせをしながら、アイデア出しをして進行するという方法でデザインを進めていました。
アウトプット
クラアントの表現したい想いを形にしたシンボルマークのあるロゴを一年半で8つ以上を作成しました。ロゴにはコンセプト、その意匠の図解とその意味、色が与えるイメージを必ず添えてクライアントに説明をし、デザインチームメンバーで作成した複数案から投票して選定してもら形をとっていました。下記は、今まで私が作成したロゴの一部です。中には、大きな企業のオフィスロゴに選ばれたものもあります。
※一部コンセプトを非公開にしています。
取り組んだこと①
ヒアリングシートの作成
まず、ロゴのヒアリングの時に重要な項目もヒアリングシートして下記の様にまとめました。これを使うことで、ヒアリング事項の漏れをなくし、メンバーへの共有もシートを展開するのみで対応を可能にしました。
ヒアリング時に気をつけること
さらに、ヒアリング時に気をつけることとして、以下のことを気にすることを明文化しました。
①クライアントにすべておしつけない
クライアントはいつもロゴに対して具体的なイメージがあるわけではないため、クライアントにすべてを委ねて、答えを聞き出すだけのヒアリングの仕方は、 デザインを限定的にする恐れすらあります。具体的にどんなロゴがいいかを聞き出すよりも、その対象にどんな思いがあるか、どんな将来のヴィジョンがあるのか、 それらがロゴを形作る要因であり、聞き出さなけらばいけない重要なポイントです。
②提案しながら促す
例えば、クライアントに”ロゴのスタイルはロゴタイプがいいですか?シンボルマークのロゴがいいですか?”といきなり聞くのは、クライアントにとっては違いがわからず、適切な選択ができない場合もあると思います。 ただ聞くのではなく、”今回のロゴの利用目的としては、企業の理念をしっかり印象に残したい、グッズ展開もしたい、とのことでしたので、見た時に記憶に残りやすいシンボルマークのあるロゴのほうが宜しいかと思うのですが、ご希望は御座いますか?"など、クライアントにとって最善な形を提案しながら希望を汲み取るということが大事です。
③本当にロゴで表現したいことを聞き出す
”どんなサービスであるか”、”どんな思いがあるか”、”どんな今後の展望があるか”、ヒアリングをする中で、どれをロゴを通して表現したいのかで、ロゴの意匠は大きく変わってきます。ATMの事業をやっているから、ATMぽいロゴにしようだとロゴではなく、ただのアイコンになってしまう場合もあります。クライアントが潜在的に望んでいることを聞き出して、そこから最適な効果を生む意匠を考える必要があります。
取り組んだこと②
プロセスのフレームワーク化
次に、ヒアリングから得た情報を元に、下記の様にアイデア出しをしていき、ロゴの元になる情報の方向性や認識をチームで合わせました。ツールはmiroを用いて行いました。
まず、黄色のエリアにヒアリング情報から、大事だと思われる名刺、形容詞を抽出し、キーワードとします。同じ様な意味のものはまとめて一つにします。
次に、赤と水色のエリアで抽出したキーワードを元に”連想”される、シンボルの元になるモチーフとロゴのトーン&マナーについて、それぞれアイデアを発散していきます。
これらの情報を元に制作をはじめることで、ある程度の共通認識を持って、クライアントが大事にしていることからズレることなく、他の人のアイデアにも触れながら製作を開始することができました。
取り組んだこと③
選ばれやすかったロゴ
チームとしてロゴ制作をしていく中で、選ばれやすいロゴ(シンボルタイプ)がわかってきました。そのことを更にチームで共有して、作成する時の一つの指針としました。
振り返り
クライアントがロゴで何を表現したいか、どんな雰囲気のロゴがいいのか、それをヒアリングから、いかに引き出せるかがかなり重要だと感じます。また、コンセプトをクライアントに説明する際に、しっかりとその価値を”伝える”ことも同じく重要だと思いました。ロゴのデザインは、まだまだ奥が深いですが、個人やチームでとにかく経験値を積み、そのノウハウを意識的に蓄積する事が大事だと思いました。